今回は、『富士山』と『八ヶ岳』のお話ですよ♪
山の神様が、まだ元気だったころの話です。
富士山には、女の神様がいました。とても気が強くておてんばな神様でした。雲の上から頭をつん出して、
「日本一高い山は、富士山っ」と、いつもいばっていました。
そのころ富士山の北側に富士山より高い山(権現さん)があり、男の神様がいました。
この神様は、またたいそうおこりんぼうで、富士山がいばるたびに、「なにを言う。日本一高いのはおれさまの山だぞーっ」とものすごいいきおいでおこりました。
二つの山はどちらも、「自分の山が高い」と言ってはいつもいつもけんかをしていました。
山のけんかがはじまると大変です。頭からぼんぼん火をふき、地面はぐらぐらゆれ、火の雨石の雨がふってきて、人もけものも右おう左おうして、にげまわりました。それが何百年も何千年も続いたのです。
そのうちに「こんなふうに、けんかばかりしていても仕方がない。阿弥陀如来様にどっちが高いか見てもらうことにしよう」と言って頼みます。
訳を聞いた阿弥陀如来様は「わかった。いい考えがある!」そう言って、長い長い樋(とい)といを持ってきて、一方のはじを富士山の頭の上にのせ、もう一方のはじを権現さんの山の上にのせて、といをかけわたすと、「この樋(とい)のまん中から水を落す。水が流れていった方が低いということだ」と言って、さっそくといのまん中から水を落しました。
水はつーっつっつっつっつーっと富士山の方へ流れていきました。「これは、富士山の方が低い、権現さんの山が日本一高い山と決まった!」阿弥陀如来様は二つの山にそう言い渡し、それを聞いて権現さんの山は安心して、眠りにつきます。
はらの虫がおさまらないのは、富士山です。くやしくて、くやしくて、太い丸太んぼうでいきなり権現さんの山の頭を思いっきりぶったたきました。
ベシッ、ベシベシベシベシベシベシベシッ。
頭が八つにわれて低くなってしまいました。
こうして富士山が日本一高い山になり、今では、何ごともなかったすまし顔。
頭を八つにわられてしまった権現さんの山は、その後、「八ヶ岳」とよばれるようになったというお話です。